中小企業にとっての特許管理の重要性


 中小企業の特許管理は大手企業の特許管理とは異なります。

 大手の場合、調査担当、出願担当、契約担当など各担当別に人員が配置されている場合が多いと思います。
 しかし、中小企業では、こうは行きません。特許担当者は良くて専任者が一人、多くは兼任者だと思います。
 さらに、少ない人数で、調査、出願、契約などあらゆる分野の仕事をしなければなりません。

 また、兼任者では(多くの場合、設計、開発しながら関連特許を自分で調べる)、どうしても、特許的な対策が後手に回ります。顧客の納期、クレームなどと違い、特許対策の失敗はすぐには結果がでません。後からじわりじわり攻めてきます。

 5年後、10年後に

「あの時、ちゃんと特許出願しとけばよかった。」
「あの時、ちゃんと調査しとけばよかった。」 と思うことになります。

 このような状況から、中小企業での特許管理は、効率が要求されるとともに、特許管理に力を入れる心構えがないと大手企業と対等に渡り合っていけません。
 また、新しい技術について、調査し、特許出願することは重要ですが、さらに重要なのが、これらについて継続的にフォローしていくことです。中小企業の場合、継続的なフォローが十分でない場合が多いようです。


 具体的には

 1)基本特許に対して関連特許を順次出願していくこと。
  詳しい説明は省きますが、関連特許を継続的に出願していくことにより、より強い特許になります。
  特許網と呼ぶ人もいます。

  自社の利益を最大限にするために必要です。

 2)定期的に調査し、問題のある特許があれば対策を取る。
  問題となりそうな特許を事前に知り、対策を取ることにより損害を最小限にすることができます。
  どんなに詳細に調査しても、出願前1年6月間の公開公報を出願時に調べることはできません。
  これについては後日調べるべきです。自社の出願前後に近似する出願が存在することは良くあることです。

  開発・設計者が、最新特許に目を通すことにより、新たなアイデアが出てくることが良くあります。

  自社の投資を無駄にしないために、是非とも必要です。



<権利侵害を考えた場合>

 同業種の大手企業同士の関係
 競合する分野で特許を多く保有している大手企業同士の場合、クロスライセンス(特許を相互に利用しあうもの)を結ぶことがあります。
 クロスライセンスを結ばない場合でも、ひとつの特許について侵害警告を出したら、相手所有の特許について、何倍もの侵害を指摘されてしまうことがあります。
 相手を訴える前に、相手の数多い特許に侵害していないことを確認する必要があり、この確認が取れなければ、やぶ蛇になります。
 よって、訴訟に発展することはほとんどありません。

 中小企業が大手企業の特許について権利侵害をした場合
 この関係では、中小企業の数少ない特許について、大手企業が権利侵害していないか調べるのに時間はかかりません。
 よって、権利侵害の排除作業も容易に進みます。

 大手企業が中小企業の特許について権利侵害をした場合
 この関係で苦労された中小企業もあると思います。大手企業は当然プロの集団ですから、あらゆる手段を使って、訴訟を有利に進める対策をとってきます。
 将来、大手企業が参入してくる可能性がある製品に関する特許管理は万全の対策が必要です。

 異業種の企業が重要な特許を保有している場合
 この場合、他の権利侵害の関係がほとんどないため、金銭で決着がつくことが多いようです。

 権利侵害の訴訟の場面で考えても、中小企業は大企業に比べて不利です。


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